研究テーマ

歯質中に取り込まれたフッ素によるフルオロアパタイト変化の分析

歯に取り込まれたフッ素は、歯の構成成分であるハイドロキシアパタイトと反応しフルオロアパタイトを形成する。フルオロアパタイトはハイドロキシアパタイトと比較して耐酸性が強い性質があるため、フッ素がう蝕予防に有効とされている。しかし、取り込まれたフッ素のどのくらいの量がフルオロアパタイトに変化しているのかは不明な点が多い。ハイドロキシアパタイトや歯にフッ素を作用させ、その後フルオロアパタイト成分のみを残した状態でのフッ素濃度を分析、材料から取り込まれるフッ素のアパタイト変化への効果などを評価検討し、う蝕予防に最適なフッ化物適用の条件を確立する。

アパタイト光触媒(La-OAP/HAP)の歯科応用

人工的に合成したランタン-オキシアパタイト(La-OAP)は優れた光触媒作用により抗菌性や色素分解能、吸着能があることを報告した。現在はHAPとの複合体を作製し、その漂白効果を調べている。また高齢者の口腔ケアに向けた歯磨剤に加えて、新たに複合体を漂白剤へ添加し、齲蝕や歯周病予防だけではなく同時に着色除去やホワイトニングも出来る歯磨剤、漂白剤の開発および効果の検討もしている。

ケイ酸カルシウムの歯科用セメントしての応用

歯内療法分野で利用されているMTAは優れた硬組織誘導能と酸菌作用を有しているが高価なために使用頻度が限られている。そこで、MTA成分の中枢をなすと考えられているケイ酸カルシウム(CaSiO3)、ケイ酸二カルシウム(Ca2SiO4)、ケイ酸三カルシウム(Ca3SiO5)を珪藻土と炭酸カルシウムから合成して理工学的性質と生化学的の評価から歯科応用を検討する。

二水石膏をベースとしたリン酸三カルシウムの合成と歯科応用

石膏を合成する過程でリン酸三カルシウム+C17が用いられていることに注目し、石膏からリン酸三カルシウム(TCP)の合成を検討する。大きな硬組織欠損が生じた時の補填材としては自家骨や他家骨移植があるが、最近ではファインセラミックスによる人工骨(ハイドロキシアパタイト、リン酸三カルシウムなど)が注目されている。歯科用石膏は模型材として日常の歯科臨床で頻用される材料であるが診断あるいは作業用としての役割が終わるとそれらはすべて産業廃棄物となる。研究ではそれらを粉砕した二水石膏粉末を利用してリン酸三カルシウムを合成する。

歯科用修復材料によるう蝕抑制効果の評価、検討

歯科用修復材料、特にフッ化物を含有する材料による二次う蝕抑制効果について検討する。材料を充填した歯の試料を、う蝕のできやすい酸性環境や、口腔内環境をシミュレートした自動pHサイクル装置を使用した場合における、周囲歯質の脱灰、再石灰の様子をマイクロラジオグラフィーで評価する。また、材料適用時における歯質へのフッ素の浸透(取り込み)やカルシウムの減少(濃度)について、観察試料を乾燥させることなく非破壊で測定できる、マイクロPIGE/PIXE装置を用いて評価。種々の条件について検討することで、う蝕予防効果を最大に発揮できる材料や条件を確立する。効な活用法を検討し、技工作業用の研磨用具・研磨砂の試作や高価な生体材料の創製を含めた幅広い歯科応用を模索する。