口腔生化学分野 朝日大学歯学部 口腔構造機能発育学講座

 【研究内容 】
 
      

 1)口腔扁平上皮がんによる宿主の免疫系制御に関する研究

口腔癌を始めとするがんの多くが、その悪性化の過程で宿主の免疫チェックポイント機構を抑制し、自身の生存や増殖を促進することが判っています。それらの作用機構を標的とする治療薬の開発が現在様々な研究室や企業で進められています。

我々の研究室では、口腔扁平上皮癌の動物モデルの作出を行っています。具体的には低転移型のマウス口腔扁平上皮癌Sq-1979を元に、Sq1979移植マウスから頸部リンパ節高転移型の細胞株を樹立し、この動物モデルを実験に用いています。それらを用いて、悪性度の低い口腔扁平上皮癌細胞はIL-1αというサイトカインを放出し、間質の線維芽細胞(CAF)を介して刺激リンパ球を抑制することが判明しました。一方、高転移型の、悪性形質の高い癌細胞は、それとはまったく異なる機構で、移植マウスに骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)を誘導し、強力な免疫抑制作用をもたらすことが示され、現在その機構の解明を進めています。





 2)口腔癌関連遺伝子の機能解析
 
網羅的遺伝子解析によって得られたマーカー遺伝子をGene Ontologicalな観点、即ち生物学的なプロセス、分子機能、細胞生物学的意味に基づいて評価し、発癌機構の解明や新たな分子治療法の開発を検討します。その一環として主要なマーカー遺伝子の発現調節機構や機能解析を進めています。
 

マトリゲルを使った癌細胞浸潤能の検討; 非癌で発現が有意に上昇するマーカー遺伝子(SPR)を遺伝子導入すると、口腔癌細胞株の浸潤能は顕著に抑制され(左上)、一方非誘導細胞(左下)およびコントロール細胞(右側)では高い浸潤能が維持されたままである。
 



 3)歯周組織等の再生を促進する新規歯科材料の開発研究

3-1) プロポリス

プロポリスは、ミツバチの産生する天然樹脂成分の総称であり、昨今の日本では健康食品素材として普及しています。その抽出液中には様々な植物成分やミツバチの分泌物が存在し、炎症や悪性腫瘍、肥満などのメタボリック症候群に対して有効な作用をもつことが報告されています。我々の研究室では、プロポリス抽出液のヒト骨髄由来幹細胞への作用や、免疫調節因子の解明を行い、有効な歯科材料への応用を目指しています

3-2) S-PRG フィラー

S-PRGsurface reaction-type pre-reacted glass-ionomer)フィラーは、実際に歯科用充填剤であるレジンセメントの構成材料で、フッ素を始めとする様々なイオン徐放作用を有する生体機能性材料です。我々の研究室では、イオンの徐放挙動やイオンに対する歯髄組織や歯槽骨への応答性 を解析・分析し、歯質の脱灰を抑制し,再石灰化を促進する可能性のある歯科材料への応用に向けた基礎研究を行っています。

3-3) ゼオライト

ゼオライトは、特異的な物理化学特性を有する機能性無機多孔材料であり、触媒や吸着剤として産業分野で広く使用されています。我々の研究室では、ゼオライトのもつイオン交換能や吸着能に着目し、歯科材料に必要な多機能性フィラーの開発や、膜状に加工しインプラントの表面修飾材としての利用を目指した研究を行っています。また、この物質はS-PRGフィラーなどとの併用で、特定のイオン効果を発揮する歯科材料の創出などが可能と考えています。






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   Department of Oral Biochemistry, Asahi University School of Dentistry