研究紹介
研究テーマ
口腔自然免疫系を刺激する歯垢・口腔細菌叢の分子パターンの解析
自然免疫系は特定の受容体を使って異物の存在を“分子パターン”として識別し、排除するためのシステムです。ヒトでは、さまざまな分子パターンを識別する100種類ほどの受容体が存在すると考えられています。
口腔に棲みつく細菌叢は歯垢を形成し、歯周病やう蝕の原因となります。これまでに歯垢や口腔細菌叢に存在する分子パターンはまだ一部しか解明されておらず、解明されている分子でも、その役割の詳細は不明なままです。私たちは口腔の自然免疫機構においてどのような分子パターンがどのような受容体で認識されるのかについて解析を進め、その役割を含めて全貌を明らかにすることを目指し研究を進めています。
口腔自然免疫機構としての唾液抗菌因子の作用と産生機構に関する研究
口腔の多くの機能は唾液の働きに依存しており、口腔における多くの免疫作用も唾液に依存しています。唾液には抗菌作用を発揮する種々の因子が含まれており、口腔自然免疫系として有益性を発揮しています。一方、その働きや役割が十分に解明されていない因子も多く存在しており、場合によっては、過剰に炎症を起こすのに加担するなど、必ずしも有益でない作用を発揮してしまう可能性も考えられます。私たちは抗菌ペプチドLL-37をはじめ、唾液中の種々の抗菌因子の作用やその産生機構について解析を進めており、唾液の免疫作用における役割について探索しています。
自己免疫性唾液腺炎と自然免疫系との関連性に関する研究
シェーグレン症候群は、唾液や涙の分泌が障害される自己免疫疾患です。唾液分泌が障害されることで乾燥症状が現れ、その結果多くの口腔機能が障害され、う蝕や歯周病も起こりやすくなってしまいます。
シェーグレン症候群では唾液腺に多くのリンパ球が集積し、腺組織を破壊してしまいます。私たちはこの現象に自然免疫系が関与している可能性を見出しており、唾液腺炎が誘導される原因について解析を進めています。
自然免疫作用を担う分子の特定とその作用機序・役割に関する研究
口腔免疫系は口腔局所の免疫機構だけでなく、全身の免疫機構の影響も色濃く受けています。また口腔免疫系が全身免疫系に少なからず影響することも知られています。
私たちは自然免疫系に着目しながら、口腔と全身の両者で自然免疫作用を発揮する未解明の分子を特定し、その作用機序や役割を解明することを目的に研究を進めています。
研究業績
Domae E, Mori T, Hanaoka M, Into T.
Recognition of Porphyromonas gingivalis lipopolysaccharide by human caspase-4 depends on lipopolysaccharide purity
and guanylate-binding protein 1.
Journal of Oral Microbiology. 2025 Dec 1;17(1):2589652. doi: 10.1080/20002297.2025.2589652. eCollection 2025.
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/20002297.2025.2589652
Mori T, Domae E, Hanaoka M, Into T.
Dental plaque biofilm transforms host-derived β2-microglobulin into polymorphic fibrils for integration into the biofilm matrix.
Biofilm. 2025 Nov 16:10:100331. doi: 10.1016/j.bioflm.2025.100331. eCollection 2025 Dec.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2590207525000796
Tanabe G, Mori T, Araki M, Kataoka H, Into T.
Role of LL-37 in Oral Bacterial DNA Accumulation in Dental Plaque.
Journal of Dental Research. 2024 Feb;103(2):177-186. doi: 10.1177/00220345231210767. Epub 2023 Dec 13.
https://doi.org/10.1177/00220345231210767