Dept.OMS. Asahi Univ.
Shinichiro SUMITOMO DDS PhD
縫合術
粘膜の縫合
歯肉や口蓋などの硬く厚い粘膜では角針を、口底などの薄く弱い粘膜では丸針を使用する。
片側の粘膜弁を有鈎ピンセットで把持し持針器で保持した針を通す(①)。粘膜弁を通し終えた針の先端近くをピンセットで把持した後に、持針器を開放する(②)。持針器で針の粘膜を通過し終えた部分を把持してから、ピンセットの握りを開放する(③)。針を完全に粘膜弁から抜き出し、縫合糸も10cm程度粘膜弁を通過させる(④)。対側の粘膜弁をピンセットで把持し(⑤)、同様の操作(⑥、⑦)をくり返す。
結び目の種類
男結びは第一結節と第二結節が平行となる結び方で、通常この結び方を用いる。女結びは第一結節と第二結節が交叉する結び方で、緩みやすく通常は使用しない。外科結びは第一結節を作るときに二回交叉させる方法で、縫合操作中に第一結節が緩みにくいという利点がある。三重結びは通常の男結びに加え、結節の緩みを防ぐ目的でさらに一回結び目を作る方法である。ナイロン糸などの合成糸は結節が緩みやすいので三重結びを用いる。
結び方
A.両手結び
両側の粘膜弁を通過させたなら、左右、ほぼ同じ長さにそろえ、左右それぞれの拇指と示指で縫合糸の尖端近くを把持する(⑧)。右手を左手の手背側から回し、右手の拇指と示指で保持していた糸を左手の中指と薬指で保持する(⑨)。空いた右手の拇指と示指で左手の拇指と示指で保持していた糸を持つ(⑩)。左手を糸の輪の中より引き抜き、そのまま結び目を絞り込んで、第一結節を作る(⑪、⑫)。 |
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第一結節ができたなら、再度同様に糸を保持し(⑬)、今度は左手を右手の手背側から回し、左右の指使いを第一結節の時とは反対にして結ぶと(⑭~⑰)、男結びが完成する。 第二結節も第一結節と同じ要領で結ぶと、女結びとなる。 結節部から0.5~1cm程度を残して、余分な糸を鋏で切り取る(⑱)。 |
B.器械結び
手指の届きにくい場所で縫合する場合や糸付きの針を用いる場合に多用される方法。
縫合糸の針側の端を左手指で保持し、右手で持った持針器の尖端近くで糸をからめるように時計方向に1~2回転させ持針器の周囲に輪を作る(①)。持針器の先で他端を把持し(②)、輪の中をくぐらせて(③)そのまま輪を絞り第一結節を作る(④)。左手はそのままで、持針器を開放して糸をはなし、再度、持針器の尖端近くで糸をからめるように反時計方向に1回転させ持針器の周囲に輪を作る(⑤)。以後、同様の操作で第二結節を作ると男結びが完成する。
抜 糸
縫合創の癒合後、縫合糸を取り除くことを抜糸という。通常、口腔領域では1週間をめどとして行う。口腔内に留置された部分は汚染されており、特に絹糸のような多線維性縫合糸は細菌の繁殖する温床となりやすい(①)。十分に消毒後、糸をピンセットで把持し、組織内にとどまっていた部分を一部露出させ(②)、その部分で切ることで(③)、糸を抜き出す際に、汚染された部分が組織内を通過することを防止する(④)。