トランジスタ検波回路の特性に関する実験




トランジスタ検波回路の特性について、ちょっとした実験をしてみました。

下は、通常のトランジスタ増幅回路です。



これに対し、トランジスタ検波回路の回路図は、以下のようになります。



一見すると、両者はほとんど同じように見えます。そうだとすると、増幅回路と検波回路の違いはどこにあるのか、という素朴な疑問にぶつかります。

はじめに答えを言ってしまうと、違いは、2点あります。ひとつは、出力のところに、高周波バイパス用のコンデンサー C3 が入っていることです。もうひとつは、コレクタ電圧の違いです。普通の増幅回路では、トランジスタのコレクタ電圧は、大体電源電圧の半分を目安として、そ れぐらいの値になるように設計しますが、それに対して、検波回路では、コレクタ電圧がほとんど 0[V] になるように設計するということになっています。つまり、同じ回路であるが、コレクタ電圧が電源電圧の半分ぐらいになるようにすれば増幅回路、コレクタ電 圧がほとんどゼロになるようにすれば検波回路として動作するのではないか、と考えられます。それで、この実験では、

の2点について、実験をしてみることにしました。



高周波パスコンの適正値


まず、R1=2.2[MΩ]、R2=10[kΩ] として、C3 の値をいろいろに変えて、検波出力がどのように変化するかを調べてみます。
入力信号としては、先日作った、LA1600 を利用した高周波発振器の出力を入れることにしました。高周波の周波数は 2[MHz] とし、1[kHz] の低周波で変調を掛けてあります。

C3 としては、100[pF]、1000[pF]、0.01[μF]、0.1[μF]、1[μF] の5種でやってみることにします。

まず、100[pF] ですが、出力波形は以下のようになりました。出力振幅は 1[V] を超えていますが、高周波がバイパス仕切れずに出力に出てきているのが分かります。



C3 を 1000[pF] にしたときの波形は、以下のようになりました。高周波はかなり少なくなりましたが、それでも、少し残っているようです。出力振幅は 1[V] あり、充分な出力レベルです。



C3 を 0.01[μF] にすると、波形は下の写真のようになります。高周波は全く出力には出てこなくなり、低周波のみが出力されています。出力振幅は 840[mV] あり、検波回路として良好に動作していることが分かります。ただし、ほんの少し、波形が歪んでいます。



C3 を 0.1[μF] にしてみます。よく巷で見かけるトランジスタ検波回路は、この値にしてあるものが多いようです。出力波形は以下の通りです。振幅は 180[mV] に減少しました。コンデンサーの値が大きすぎて、高周波のみならず低周波までもがバイパスされ始めていることを示しています。



最後に、C3 を 1[μF] としてみました。それが下の写真です。低周波も完全にバイパスされて、ほとんど出力がなくなりました。




このことから、高周波のバイパスコンデンサー C3 としては、0.01[μF] 程度に選ぶのが良さそうであるということが分かりました。それより小さいと高周波が完全にはカットされませんし、逆に、それより大きいと低周波出力が減少 することが分かりました。



コレクタ電圧との関係


上の実験で、C3 の適正値が分かったので、C3 は 0.01[μF] に固定し、次に、R2 を可変抵抗に変えてコレクタ電圧 Vc を変化させ、出力振幅の変化を見てみることにします。

R1 は、増幅回路では数百kΩ程度に選ぶのが普通ですが、検波回路ではもっと大きな値を用いても問題ないので、ここでは、2.2[MΩ] とすることにしました。ちなみに、後で、もっと大きくして、5[MΩ] でもやってみましたが、実験結果はほとんど同じでした。

以下の表は、コレクタ電圧と、検波出力電圧との関係を表したものです。

コレクタ電圧(V)
出力電圧(mV)
0.5
657
0.6
796
0.7
872
0.8
911
0.9
920
1.0
930
1.5
895
2.0
830
2.5
743
3.0
632
3.5
500
4.0
342
4.5
172

グラフに表してみると、さらによく分かります。




コレクタ電圧が 1[V] 付近で検波効率が一番良く、コレクタ電圧がそれよりも高くても低くても、検波出力は減少します。また、このグラフだけからでは分かりませんが、コレクタ電 圧が 1[V] を下回ると、検波出力が単に減少するだけでなく、検波波形が歪んできます。検波回路としては、なるべく忠実に低周波信号を再生しなければなりませんから、 波形が歪んだのでは困ります。



結論


トランジスタ検波回路では、

ことが判明しました。



回路設計例


これを利用して、トランジスタ検波回路を設計してみます。回路は以下の通りとし、電源電圧を 5[V]、使用するトランジスタは 2SC1815 とします。



まず、C1 は高周波入力のカップリングコンデンサーですので、0.1 〜0.01[μF] ぐらいの値で充分です。C2 は低周波出力のカップリングコンデンサーですので、4.7[μF] あるいはそれ以上とします。回路図では普通のコンデンサーになっていますが、これぐらいの容量になると、アルミ電解コンデンサー (極性あり)を使います。

C3 は上記の実験結果を参考に、0.01[μF] とします。

R1 は、例えば、2.2[MΩ] とします。

このとき、トランジスタのベース電流は、ベース電圧を 0.6[V] と仮定して、

(5-0.6)/2200 = 0.002 [mA]

となります。極めて小さな値です。もしかすると、これぐらい小さな電流ですと、ベース電圧は 0.6[V] に満たないかもしれませんが、例えば、ベース電圧が仮に 0.1[V] であったとしても、

(5-0.1)/2200 = 0.0022 [mA]

となり、誤差は1割程度ですので、充分に許容範囲です。

2SC1815 の電流増幅率 hFE は大体 150 ぐらいですので、コレクタ電流は、

0.002×150 = 0.3 [mA]

となります。上の実験の結果から、コレクタ電圧は大体 1[V] になるようにします。それには、電源電圧が 5[V] ですから、R2 での電圧降下が 4 [V] になるようにすればよろしい。電流が 0.3 [mA] で、電圧降下が 4[V] ですから、求める R2 の値は、

4/0.3 = 13.3 [kΩ]

となります。したがって、R2 としては、12[kΩ] か 15[kΩ] を用いることになりますが、大きすぎるよりは小さすぎる方が良い(R2 が大きすぎると電圧降下が大きくなり、コレクタ電圧が 1[V] を下回りかねないから)という実験結果から、R2 は 12[kΩ] とします。

以上が、この実験から分かった、最適なトランジスタ検波回路の設計方法です。コレクタ電圧として、よく言われている、ほとんど 0[V] ではなく、1[V] 程度の値の方が良いことが分かったのは、新たな発見でした。




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