古い扇風機の部品交換





 うちの実家に、えらく古い扇風機があります。何でも、母が会社に勤め始めたごろに購入した物とかで、昭和32年の製造のようです。最近、古い扇風機の発 火事故が相次いでいるので、部品を取り替えることにしました。壊れているわけではないので、「修理」でなく、「部品交換」と言うことにします。

 これが、その扇風機です。いかにもレトロですね。



 中を開けてみます。風量切り替えのスイッチと、オイルコンデンサー、チョークコイルが見えます。白い電源ケーブルだけは、15年ほど前に交換したことを 思い出 しました。



 チョークコイルを外しました。扇風機の速度を調節するために使用されています。モーターのコイルに直列に挿入し、その全リアクタンスを変化させて、モー ターのトルクを調節する仕組みです。ただし、これが非常に細い線で巻かれており、扇風機の使用中は、発熱して触れないぐらい に熱くなります。



 これでは危ないので、チョークコイルを交換することにしました。と言っても、同じ規格のコイルが売っているわけでもありません。色々考えて、蛍光灯の安 定器に使われるチョークコイルで代用できるのではないかと思い、ジャンクパーツ店で1つ買ってきました。400円也。



 写真にあるように、13W型蛍光灯に用いるチョークコイルで、電流の定格は0.23Aとなっています。少しばかり電力面で心配ですが、とりあえずやって みることにします。



 続いて、オイルコンデンサーを外します。外したコンデンサーを見ると、2.3μFの容量となっていることが分かります。製造は1957年5月です。



 コンデンサー交換の前に、外したオイルコンデンサーの容量を測定してみました。するとどうでしょう!表示通りに、2.3μFの容量を表示します。製造か ら50年以上も経って、定格の容量を保持しているコンデンサーには脱帽です。やりますね、サンヨーさん。



 これが、新たに購入してきたコンデンサーです。交流回路に用いますの で、当然ですが、無極性コンデンサーでなければなりません。電解コンデンサーなどは有極性ですので使用できません。

 また、無極性コンデンサーであっても、電力用でない普通のコンデンサーでは発熱が心配ですので、電力用のメタライズドフィルムコンデン サー(MFコンデンサー)を用いました。MFコンデンサーにも、普通のMFコンデンサーと、MPPコンデンサー (メタライズドポリプロピレンフィルムコンデンサー)とがあるようですが、これはどちらでも良いでしょう (写真は、多分、MPPコンデンサーだと思います)。

 コンデンサーの耐圧についてですが、電源は交流100Vですが、コンデンサには電源電圧よりもかなり高い 電圧がかかる場合があります。この扇風機の実測では、コンデンサには250V近い交流電圧が加わっていました。 しかも、コンデンサーの耐圧は普通、直流に対する耐圧(電流が流れない状態での耐圧)として表示されていますので、 交流に対する耐圧(常に電流が流れる状態での耐圧)としては、直流に対する耐圧よりも高い耐圧のコンデンサを 使う必要があります。 耐圧1000Vあれば安心ですが、パーツ店に売っていなかったので、やむなく、耐圧630V、容量2.2μFの電力用メタライズド フィルムコンデンサーを購入してきました。オイルコンデンサーならぱ、万一、高圧のサージ電圧などで瞬間的に耐圧が 破れたとしても絶縁状態になるだけことが多いのに対し、フィルムコンデンサーは、耐圧が破れた場合にショート状態に なることが多いので、そのようなことが起こらないよう、耐圧には注意しなければなりません (なお、サージ電圧対策のため、後で、コンデンサに並列にバリスタ(ZNR)を挿入しました)。



 ラグ板を用いてコンデンサーを取り付け、配線をします。また、元の扇風機にはヒューズがなかったので、ヒューズホルダーを増設して、125V、1Aの ヒューズを設置しました。フィルムコンデンサーの万一のショートに対する対策の意味も兼ねています。



 これを、元通りに組み立てます。



 部品交換が終了した扇風機です。写真では、シャッター速度の関係で、羽が止まっているように見えますが、実際には快調に回っています。




 と言うわけで、50年前の扇風機がリニューアルして蘇りました。



 補足説明

ちなみに、この扇風機の回路図は以下のようになっています。



 スイッチは、左から切、微風、弱風、強風です。ヒューズはもとの扇風機にはありませんでしたが、 今回新設したものです。さらに、コンデンサに並列に、適切な電圧のバリスタ(ZNR)を入れました。 バリスタは必須ではないのですが、入れておいたほうが安全かなと思って、取り付けることにしました。 印加される交流の尖頭値以上で、コンデンサの耐圧よりも低いバリスタ電圧のものを選ばなければ なりません。実は、コンデンサにかかる交流を実測する前にバリスタを購入してしまい、 バリスタ電圧330Vのものを取り付けました。取り付ける直前にコンデンサの両端の交流電圧を 測定すると、250Vもあります。ということは、尖頭値が350Vもあることになり、330Vのバリスタ では少し電圧が低いのですが、バリスタは、バリスタ電圧を超えると急に導通するというわけではなく、 バリスタ電圧をある程度超えないと有意に導通しませんので、 まあいいことにしてそのまま取り付けてしまいました。

 交流モーターには、直交する方向にコイルが2つ巻かれており、その一方だけにコンデンサーを直列に入れることによって交流に位相差を発生させ、 モーターを始動するようになっています。コンデンサーの入っているほうが始動用コイル(副コイル)、入っていないほうが駆動用コイル(主コイル)です。 始動用コイルに直列に入れたコンデンサーの容量によって、扇風機の起動力が変わります。また、駆動用コイルに直列に入れたチョークコイルのインダクタンス によって、扇風機の速度が変わります。

 実験してみたのですが、コンデンサーの値を1μFや0.5μFに変更してみますと、扇風機がゆっくりとスタートするようになります。 ただし、最終速度はコンデンサーの容量にはほとんど無関係です(風量切り替えスイッチは同じ位置)。

★ 余談ですが、古い扇風機などで、起動力が弱ま り、手で少し回してやらないと回り始めないものは、この始動用コンデンサーが劣化して容量抜けを起こしているのでしょう。 そのような扇風機は、コンデンサーを交換すべきだと思います。


 蛍光灯の安定器で代用したチョークコイルですが、風量切り替えスイッチを切り替えると、ちゃんと速度が変わります。 ただし、元の微風よりも若干回転速度が遅いです。チョークコイルの規格が全く同じではありませんので、 これは仕方がないところです。また、チョークコイルの部分で、やや発熱が多いのが気になりますが、それでも、 元のチョークコイルよりは発熱は少ないですし、蛍光灯の安定器は相当発熱しても耐えられるように設計されてい ますから、多分大丈夫でしょう…。できれば、もう一回り大きな安定器にしたいのですが、ジャンク店で売っていたこの次の大きさの安定器は40W用で、今度 は逆にインダクタンスが大きすぎて、扇風機が回転しませんでした。

 また、もともとのチョークコイルには中間タップがあったのですが、今回入手した蛍光灯の安定器は、中間タップのないコイルになっていますので、実際に は、上図の回路とは少し異なり、弱風がなくなって、微風と強風 だけになってしまいました。このコイルのインダクタンスを測定するのを忘れて、取り付けてしまったのが少し悔やまれます。直感的には、数100mH程度で しょうか。もしかすると、1H近くあるかも知れません。

★ちなみに、入力電圧が交流100Vなのに、どうしてコンデンサーの両端に250Vの電圧が出てくるのか、 不思議に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、交流回路において、コイルとコンデンサには 逆位相の電圧が発生しますので、実効電圧が足し算ではなく引き算となって、入力電圧と 釣り合うのです。モーターのコイルの両端の電圧は測定していませんが、おそらく、モーターのコイルに 150Vの電圧が発生し、コンデンサーの電圧250Vとの差 |150-250|=100となって、入力の交流100Vと 釣り合うはずです。実際には、コイルの純抵抗や、モータが回転するときの速度に応じた 逆起電力などの影響もありますので、状況はもう少し複雑ですが、とにかく、コンデンサーの両端には、 入力電圧よりもはるかに高い電圧が出てくることがあります。ですから、コンデンサーとしては、 充分に大きな耐圧のものを用いる必要があるのです。




 後でもう一台コンデンサーを交換しました。





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