ノートパソコンの熱対策




先日、大須(名古屋の電気街)のある店で、A5版ノートである、FMV-5233MC/W が 18,690円で出ているのを見つけ、衝動買いをしてしまいました。もともと1999年の発売のパソコンなので、CPUはPentium MMX 233 MHz なのですが、メモリーが96MBに増設済み、HDDは6GB積んでいました。

私はスピード狂ではなく、むしろ、結構遅いCPUが好きなほう(!)なので、躊躇することなく購入しました。外国に行ったりするときに、小さくて軽い(重 量わずか1.1kg)ので、いいと思ったからです。外国で旅行中に使うだけなら、ワープロとメールぐらいができればいいので、このスペックでも、 Windows 98 を乗せれば実用的な速度で使えそうです。

ハードディスクの内容はすべて消去され、動作確認用に、MS-DOS の COMMAND.COM だけが入っていました。最近の若い人は、「MS-DOS の COMMAND.COM」と言っても通じないかもしれませんが、10年以上前に使われていたOSの一種です。私などは、MS-DOSに馴染んでいる口なの で、逆になつかしさすら感じます。

ところがです!コマンドプロンプトから「dir」とか、「type autoexec.bat」とか、意気揚々と MS-DOS のコマンドを打ち込んでいたら、急にマシンが反応しなくなりました。キーボード入力を全く受け付けず、プロンプトも返ってきません。

起動しなおすと、今度は BIOS の途中で停止しました。しばらく置いてから再度起動すると、今度は MS-DOS プロンプトまでは行きましたが、数分でまた停止します。特定のコマンドのときに停止するのではなく、色々なタイミングで停止するので、どうやら熱暴走のよ うです。この暑いのに冷房のない状態で作業していたことは事実ですが、とは言え、わずか数分で熱暴走して停止するようでは、先が思いやられます。今から Windows をインストールしようと思っているのに、これではインストールすらできないかもしれません。

このノートにはCDドライブが付いていないので、とにかく中を開けてハードディスクを外し、他のパソコンに接続して、そこから Windows 98 のインストーラーを転送しました。それからハードディスクを取り付けなおして、再起動しました。MS-DOS プロンプトから Windows 98 のセットアップを起動し、インストールを始めました。冷房のある部屋で作業をしましたが、10分もしないうちに熱暴走します。そのたびに再起動して修復 セットアップで続行し、結局、10回ぐらい修復セットアップを繰り返して、Windows 98 のインストールには成功しました。しかし、VGAやモデムを始め、いくつかのデバイスのドライバーがありません。「不明なデバイス」として認識されるので チップ名も分からず、ネット上で探しましたがうまく出てこなかったので、Windows XP を乗せることに決定しました。

それで、ガンガンに冷房を聞かせた部屋で、下に物を敷いてノートパソコンを机から少し浮かせた状態で扇風機(もちろん、本来人間に使う普通の扇風機で す!)を強風にして風を当てながら、作業することにしました。現在、Winodws 98 は入っているので、SCSI の PC カードを認識させることができたので、そこから SCSI の CD ドライブを接続し、Windows XP のインストールを開始しました。CPU が非力なために、インストールに二時間以上を費やしましたが、結局、一度も停止することなく、インストールが完了しました。このことからも、熱暴走が停止 の原因であることがほとんど決定的になりました。

Windows XP では、問題なくデバイスを認識しています。起動は確かに遅いですが、一度起動してしまえば、あとは思ったほど動作は重くありません。これならまあ、出張先 で使うだけなら許容範囲でしょう。

ここからが問題です。出張先では、常に冷房があるとは限りませんし、あったとしても、いつも冷房を入れながら、さらに扇風機の風を当てていないと使えない ようでは困ります。何とか、熱暴走しないようにしなければなりません。

このノートパソコンにはファンが付いていませんので、まず考えたのが、中にファンを取り付けることです。そこで、一度分解して、中を見てみることにしまし た。

写真1 キーボードとハードディスクを外したところ。この状態から、フロッピー起動して、CPU の発熱の具合などを見てみました。



写真2 その拡大図です。

写真3 さらに液晶を外して続行します。

写真4 本体だけになってしまいました。上面の放熱板もこれから外します。

写真5 背面のパネルを外してからでないと、上面の放熱板は外れませんでした。マザーボードがやっと出て きました。

背面のパネルに一つのコネクターがきちんとはまっていなかったことや、外した上面の放熱板の裏側に傷が付いていたことなどから、このパソコンの前の持ち主 も、このパソコンをバラバラにしたことがある、と判断しました。ノートパソコンの放熱、特にこのように小型のノートの放熱は難しい問題であることは分かり ますが、とは言っても、メーカーでは、真夏に冷房のない状態で使っても、少なくとも数分で熱暴走するような設計をしているとは考えられません。前の持ち主 がクロックアップを試みて、マザーボード上のどこかのチップ抵抗でも交換して、CPU電圧を上げており、そのために容易に熱暴走しているのではないか、と の疑念が残りますが、どのチップ抵抗をどうすればよいのかも皆目分からず、結局、これ以上追及することはせず、代わりに放熱を強化することを考えることに しました。

A5ノートだけあって、本体内部にファンを取り付けるのは厳しそうでしたし、仮に例えばCPUの上にファンを取り付けても、熱い空気を排気しないと、本体 内部で空気が循環しているだけでは、やはり温度は上昇するだろうと考え、外部から空気を送り込んでやることにしました。

うちの大学院の学生の一人が言うには、ノートパソコンのPCカードのスロットに挿すファンがあるとのことで、早速買いに出かけたのですが、どこに行って も、「確 かに以前はそのような商品がありましたが、ここ5年位見てないですね。もちろん、うちには在庫はありません」
と言う返事でした。

うーん、仕方ない。それなら、別の方法を考えるか、ということで、とにかく、5Vで動く角型のファンと、USBファンの2つを買って帰りました。

まず、USBファンから実験です。CPU の放熱板は、最終的にはキーボードにつながっているので、キーボードを上から冷やすだけでも効果がありそうです。さらに、いらなくなったPCカードを分解 し、取り外したカバーの片割れをPCカードスロットに半分差し込んでガイドとし、ここからUSBファンの風を本体内部に送り込みます。こんなんで本当にど れだけの風が本体内部に入っていっているのか分かりませんが、まあ、ないよりはましでしょう。

写真6 USBファンでキーボード表面を冷やすとともに、PCカードのスロットにガイドを半分挿し込み、 本体内部にも風を送り込む。

写真7 これを違う角度から見たところです。

USBファンで冷やすようにしましたが、やはりしばらくすると熱暴走を起こします。

それならばということで、PCカードのスロットから直接風を送り込むこととし、角型のファンを取り付けることにしました。このファンは電源電圧5Vで動く もので、そのための電源を取らなければなりません。電源はUSBから取るのが良いだろうと考えたのですが、そのためだけに、本体に2つあるUSBコネク ターの一つを占有させるのは気に入りません。ファンの電流を実測すると130mAでしたので、それならUSBハブを介しても可能と判断、4ポートのUSB ハブを取り付けることにしました。それが下の写真です。

写真8 これが、取り付けた4ポートのUSBハブ。手前右側に、外付けの電源アダプターをつなぐ外部電源 の入力端子が見える。

当初は、この4ポートUSBハブのうち、1ポートを、ファンの電源用に占有しようと考えていました。しかし、このUSBハブをじっと眺めているうちに、 パッと頭の中にひらめくものがありました。手前右に見える、外部電源の入力端子を、もしや、5Vの出力端子として使えはしないかと。

電源の入力端子を、逆に電源の出力端子として使うというのは、一種の逆転の発想です。

結果は OK。ちゃんと 5V が出てきます。そこで、ここから、ファン用の 5V 電源をとることにしました。それが下の写真です。

写真9 本来はセルフパワー用の外部電源の入力端子を、逆に、バスパワーの 5V 電源の出力端子として使う。当然、それなりの電流しか取れないが、USBポートを占有することなく、 5V 電源だけ取りたいときには便利。

それまで使っていたUSBファンは止めて、角型のファンを直接PCスロットに差し込んで、風を送り込むようにしたのが、下の写真です。しかし、如何せん、 風量があまり大きくないために、やはりしばらくすると熱暴走してしまいました。

写真10 PCMCIA スロットに差し込むタイプのファンが最近は手に入らないので、自作しました。5V の電源は、写真9にあるように、USB ハブの外部電源入力端子を、逆に、電源出力として利用しています。でも、風量が弱く、やはり熱暴走を止められませんでした。

折角作ったファンですが、風量が充分でないようです。そこではたと気付いたのが、空気の抜け穴がないのではないか、と言うことでした。底面のメモリーの近 くが相当熱くなっていることもあり、増設メモリー用の底面カバーに穴を開けて、空気が通るようにしました。こうすると、空気が抜けるだけでなく、熱くなっ たメモリーチップから直接熱放射の効果もあり、一石二鳥です。ここからほこりが入りうるのは仕方ないこととして、我慢することにします。実際、底面のこの 穴から入るほこりよりも、ファンが送り込むほこりの方がずっと多いでしょうし。

写真11 底面の、増設メモリー用カバーに穴を多数開けて、側面のファンから送り込まれた空気が抜けるよ うにしました。メモリーチップからの熱放射の効果もあり、一石二鳥のはずだったのですが...

実は、当初からずっと気になっていたのですが、上の写真のように、このノートパソコンには、底面に、グレーの滑り止めシートが付いています。これは、机面 に傷をつけず、また、ノートパソコンが滑るのを防ぐために付けられているようなのですが、ビロードのような材質でできていて、ノートパソコンから見ると、 まるで毛布にくるまっているようなものです。少しでも放熱しなければならないのに、毛布に包んでいるのでは、これではどうぞ熱暴走してくださいと言ってい るようなものです。それで、これをすべて剥がすことにしました。なかなか取りにくいのですが、根気よく手で剥がし、残ったシートはアルコールで丁寧に拭い て、すべて取り去りました。

滑り止めシートをすべてはがし、ついでに、机面から浮かせるために、ゴムの足を四隅に取り付けることにしました。それが下の写真です。

写真12 滑り止めシートをすべて剥がし、四隅にゴムの足を取り付けた FMV-5233MC2/W。効果絶大で、熱暴走はぴたりと止まりました。

結果はバッチリ!これだけで、熱暴走はぴたりと止まりました。最初は側面のPCカードスロットにファンを取り付け、冷房の効いた部屋で使ってみたのです が、丸一日使っても熱暴走は起きませんでした。

それで、今度は思い切って、わざと冷房がなく、日の当る部屋に置き、さらに、側面のファンも取り去って、どこまで動くか実験してみることにしました。室内 の温度は38℃もあったのですが、熱暴走せずに動いています。結局この、室温38℃、ファンなしの状態で、熱暴走することなく、連続9時間稼動に成功しま した。まだもっと行けそうでしたが、これだけ動くことを確認すれば、それでもう充分と判断して、実験を終了することにしました。

こうして、試行錯誤の末、ノートパソコンの熱暴走は、無事克服することができたわけです。




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