大電流型昇圧装置の製作
以前、乾電池2個での使用を想定した、3(V)を5(V)に昇圧する装置を製作しました。これは、タイマーICのLMC555とトランジスタとを用いて チョッパー回路を構成したもの で、HT7750AやNJM2360などによる昇圧装置よりも大きな電流を流すことができるものでした。
その後、さらに大電流を流すことのできる昇圧回路を考えてみました。HT7750AとNJM2360とを両方使用し、それにさらにMOS-FETを組み 合わせる方式です。
回路図は以下の通りです。トランジスタを利用するよりも、MOS-FETを用いるほうがON抵抗が小さく、効率よく昇圧できそうに思われ ましたので、MOS-FETを利用した昇圧型チョッパー回路となっています。しかし、MOS-FETを駆動するためには、一般的に、4(V)以上のゲート 電圧が必要です。そこで、まず、HT7750Aで5(V)を作り出し、これを NJM2360ならびにQ1、Q2の電源とします。これにより、MOS-FETのゲートを0(V)から5(V) まできっちりと振ってやります。こうすることにより、大電流を供給できるようになりました。
MOS-FETは、手持ちの中から、2SK2493を選んで使用しました。ON抵抗は約80(mΩ)、入力容量は1200(pF)です。たまたまなので すが、このMOS-FETは最小駆動電圧が2.5(V)となっており、駆動電圧の低い品種でした(その代わりに、ドレイン耐圧も16(V)と低くなってい ます)。D1とD2はショットキーダイオードです。L1は小さなコイルでかまいませんが、L2はある程度大きなパワーインダクタを用います。C3とC6は 低ESRコンデンサとします。
実際の回路の写真です。
負荷特性の比較です。前に製作した昇圧回路(LMC555利用)と、今回製作した大電流型昇圧回路(HT7750A+NJM2360+2SK2493利 用)の電流供給能力を比較してみまし た。一 応の目安として、出力電圧4(V)以上を維持できる電流を考えると、元のLMC555では約200(mA)(負荷抵抗22(Ω))までの駆動能力にとど まっているの に対し、今回製作した大電流型では、約600(mA)(負荷抵抗6.6(Ω))まで駆動できていることがわかります。
前回の回路
LMC555 利用
今回の回路
HT7750A + NJM2360 + 2SK2493 利用
抵抗値 電圧(V)
電流(mA)
電圧(V)
電流(mA)
4.7k
5.15
1
5.20
1
1k
5.04
5
5.20 5
470
4.97
11
5.20 11
100
4.64
46
5.20 52
75
4.49
60
5.20 69
51
4.41
86
5.16
101
39
4.28
110
5.12
131
22
4.08
185
4.98
226
15
3.88
259
4.86
324
10
3.78
378
4.61
461
8.4
(5.1Ωと3.3Ωの直列)
− − 4.48
533
6.6
(3.3Ωを2本直列)
− − 4.18
633
ただし、600(mA)もの出力電流を取ると、入力側には瞬間的に相当大きな電流が流れますので、それなりの電流供給能力を持った電源を 使用する必要があります。単3乾電池での連続使用は苦しいと思います。単2または単1乾電池2本を用いるか、ニッケル水素電池3本を入力電源に用いると良 いかもしれません。