3V→5V昇圧装置の製作



昇圧回路の設計


 コンビニエンスストアなどに行くと、アルカリ乾電池2本を用いた携帯電話充電器が販売されています。3(V)を4.6(V)に昇圧して、携帯電話のリチ ウムイオン電池を充電するようです。



 実は、妹から、これと同様の携帯電話充電器を作ってほしいと依頼されていました。そこで、研究もかねて、一台作ってみることにしました。

 乾電池2本での動作を想定していますので、低電圧でも動作する昇圧回路が求められます。そこで、1.5(V)から動作するタイマーICの、LMC555 を用いることにしました(NE555の低電圧版と考えてください)。これで発振回路を構成し、2SD1384を用いたチョッパー回路を駆動します。実験の 結果、LMC555単体では2SD1384を充分に駆動できないことがわかりましたので、バッファとして、2SC1815のエミッタフォロアを加えまし た。定電圧化するためのスイッチングのON/OFFは、Q3の2SC1815により、LMC555の5ピンをグランドに落とすことにより実現しています。 D1には電流容量の充分大きなショットキーバリアダイオードを、C4には低ESR品を用います。なお、R5は回路図では10(kΩ)となっていますが、実 作すると出力電圧が少し高すぎましたので、並列に100(kΩ)を抱かせて、9.1(kΩ)に落としました。






回路の製作


 上記の回路を、実際に製作した写真です。



 逆方向から見た図です。



 これを、100円ショップで買ったニッケル水素電池充電器の空きケースに組み込みます。



 組み込む途中の様子です。もとの充電器の基板を一部利用しています。



 5(V)出力は、USB扇風機など、他の用途にも使えるよう、汎用性を考えてUSBコネクタと同じ形状にしました。







負荷実験

 本機と、市販の乾電池式充電器、HT7750Aによる昇圧回路、NJM2360による昇圧回路の4者に抵抗負荷をかけて、比較実験してみました。その結 果を 以下の表に示します(電流は計算値)。


本機
乾電池式充電器
HT7750A
NJM2360
抵抗値 電圧(V)
電流(mA)
電圧(V)
電流(mA)
電圧(V)
電流(mA)
電圧(V)
電流(mA)
4.7k
5.15
1
5.03
1
5.07
1
5.01
1
1k
5.04
5
5.02
5
5.07
5
5.01
5
470
4.97
11
4.99
11
5.07
11
5.00
11
100
4.64
46
4.79
48
5.07
51
4.92
49
75
4.49
60
4.69
63
4.99
67
4.88
65
51
4.41
86
4.39
86
4.78
94
4.78
94
39
4.28
110
4.18
107
4.49
115
4.30
110
22
4.08
185
3.80
173
3.80
173
3.69
168
15
3.88
259
10
3.78
378

 市販の携帯充電器には、「4.6(V) 400(mA)」の表示がありましたが、実験ではそれほどの能力はなく、200(mA)弱までしか電流を供給できませんでした。これは、HT7750Aや NJM2360の性能とほぼ同じです。これ以上負荷抵抗を小さくすると、動作を停止してしまいました。

 一方、本機では、負荷抵抗を10(Ω)まで低くしても動作し、400(mA)近い電流を供給する能力があることが確かめられました。

 なお、実験中にも、使用した電池はだんだん消耗してきますので、実験は、まず携帯充電器、次にHT7750A、その次にNJM2360、最後に本機の順 番で行い、本機は最も不利な条件下で測定してあることを付け加えておきます。

 ちなみに、市販の乾電池式充電器の内部は以下のようになっています。リード線は私が実験のために引き出したものです。



 一方、HT7750Aを用いて試作した基板は以下の通りです。



 また、NJM2360を用いて試作した基板の写真は以下の通りとなっています。






充電実験


 負荷実験がうまく行きましたので、実際の携帯電話と接続して、充電実験を行ってみます。

 妹の持っていた携帯電話の電池です。3.7(V)、820(mAh)のリチウムイオン電池でした。



 実験開始です。携帯電話と充電器とを接続しました。



 充電ランプが点灯し、インジケータが少しずつ増えていっています。順調です。



 充電は、約2時間半で完了しました。820(mAh)の電池を400(mA)で充電するとすると、まあそんなものでしょう。妹によると、付属のACアダ プタ で充電しても、約2時間半かかるそうです。また、デスクトップパソコンのUSB端子からの充電では同じく2時間半、ノートパソコンのUSB端子からの充電 では約4時間半、市販の乾電池式充電器では3時間15分ほどかかるそうで す。そう考えると、今回の試作品の性能 は、それほど悪くないと言えそうです。

 そこで、先のHT7750Aによる昇圧装置、NJM2360による昇圧装置を用いて、充電時間を比較測定してみました。その結果、HT7750Aを用い た場合は、充電時間は約3時間15分でした。市販の乾電池式充電器とほぼ同等の性能です。

 一方、NJM2360を用いた場合は、途中で充電が停止してしまいました。HT7750Aは電源電圧0.9(V)から動作するのに対し、NJM2360 では電源電圧2.5(V)以上となっています。そのため、乾電池の電圧が下がってくると、動作が停止してしまったようです。単に充電が停止するだけではな く、回路が短絡状態になるようで、電池が過熱してしまいました。

 また、HT7750Aを用いた回路で、電源としてアルカリ電池2本の代わりに、ニッケル水素電池2本を用いた場合、充電時間は3時間45分かかりまし た。ニッケル水素電池のほうが内部抵抗が小さく、大電流が取れるので充電時間は短縮されるかと思いましたが、逆の結果となりました。ニッケル水素電池2本 では2.4(V)しか電圧が出ませんので、内部抵抗が小さい利点よりも、出力電圧が低い欠点のほうが大きく影響したようです。

 以上をまとめますと、以下の表のようになります(なお、リチウムイオン電池は定電流・定電圧充電を行う関係で、この携帯電話の充電時間は2時間30分よ り短くはならないようです)。

充電装置
充電時間
付属ACアダプタ
2時間30分
USB端子(デスクトッ プPC)
2時間30分
本機
2時間30分
市販の乾電池式使い捨て充電器
3時間15分
HT7750A 3時間15分
HT7750A + ニッケル水素電池
3時間45分
USB端子(ノートPC)
4時間30分
NJM2360
充電できず




補足 大電流型昇圧装置の製作


 その後、大電流型の昇圧装置を作りました。




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