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修士学位論文
●雷隼明LEI HUAMING 「中国における3PL 事業発展の可能性に関する調査研究」 2005年度修士学位論文
A STUDY AND RESEARCH ON THE
POSSIBILITY OF THE 3PL DEVELOPMENT IN CHINA
中国の物流市場は国の経済成長をはるかに超える勢いで拡大している。中国のGDP (国民総生産)成長率が年8 % 〜9 %で推移しているのに対し、このところ物流市場は毎年20 % 〜30 %のペースで成長を続けている模様だ。 近年中国物流業界では、3PL が注目されている。この3PL は荷主に対し物流改革を提案し、包括して物流業務を受託する事業である。物流6 機能を統合し、調達から、生産、ときには回収までも統合して、需要者から受託する事業者である。もちろん、マネジメント全体、つまり対象とするシステムの計画、実施、評価を一貫して担うことともなる。物流機能活動の高度化はもちろん生産、販売の高度化のためにも、3PL の導入は必要である。本論文「中国における3PL 事業発展の可能性に関する調査研究」を推進するために、物流事業者における3PL 事業の実施状況や取り組み意向、荷主企業における物流業務の外部委託や3PL の利用動向を把握する。同時に、3PL サービスの提供側ならびに利用者側からみた問題,点や課題を調査・分析する。 今回の調査より、現在、中国物流業界では3PL が注目を集めていることを確認した。 |
●劉紅松 LIU HONGSONG 「中国におけるインランドデポ配備の可能性に関する調査研究 −日本のI D の現状・課題の調査を中心に‐」 2005年度修士学位論文
A STUDY AND RESEARCH ON THE
POSSIBILITY OF THE INLANDDEPOT CONSTRUCTION IN CHINA
中国が世界の工場から世界の消費市場へ、さらには真の国際市場の一翼を担うためには、世界の流通機能を担うことが必要となる。そのためには、国際的な流通システムを構築し、その効率化・高度化を行うことが欠かせない。また、中国市場の更なる高度化には、西域開発が必須である。中国内陸部での開発を推進するための拠点のーつであり、海外と内陸部との直結を図るための内陸通関拠点(Inland Depot :以下I D )がこれからの中国の国際輸送、地域発展高度化の鍵を握っているといえよう。 しかし、日本でのI D 運営動向によって、以下の方向性が掴めた。すなわち、このI D システムが、その効果を発揮するためには、施設の内陸化に止まらず、国際港湾や空港と内陸を結ぶ輸送システム、特に国際輸送の一貫化が実現されて始めて、その効果を倍化することである。さらに、この流動の効率化、高度化のためには、物流システムと通関制度との一体化が対策の軸となる。このようにI D システムは、輸送システム、通関制度を含んでいるだけに、検討の領域は広範囲に亘っている。 したがって、本調査、研究では、その範囲の広域性と共に以下の少なからぬ課題に直面した。すなわち、中国でのI D 取り組みはこれからであり、事例に乏しいことである。従って、日本での先進的な事例を探り、その調査、分析を中心に進め、これらから得られた課題を分析し、今後の中国でのI D のあり方を導くこととした。 日本のI D 事例分析では、国際物流の高度化、効率化には、港湾機能の高度化、複合輸送等の整備、通関制度の弾力化等が深く関連していることを示した。また、I D 整備、運営には企業の組合構成等による連携推進が効果的であることが判明した。中国でのI D 整備の方向は、とくに荷主、物流業者による産業界の動向、併せて地域経済、行政の動向、施策が深く関っていることを認識し、行動することが不可欠であることを提示している。前述の日本に見られる協同組合、第三セクター等の組織化も参照すべきであるとした。 |
●金明玉 JIN MINGYU 「地域物流市場の効率化・高度化策に関する研究」 2004年度修士学位論文
RESEARCH ON THE
INCREASE IN EFFICIENCY / HIGHLY ADVANCED MEASURES TO LOCAL PHYSICAL
DISTRIBUTION MARKET
「コストを含めて国際的に競争力のある水準の物流市場の構築、環境負荷を低減させる物流体系の構築と循環型社会への貢献」することを目標として、岐阜県は地域に密着した物流の効率化・高度化を推進している。本論は岐阜県という地域を特定した物流市場の分析を通じして地域活性化に役立つ物流のために、荷主と物流業者と行政の3 者が一体となって取り組むべき方向を探る。 平成15 年初地元岐阜県で実施された物流市場に対するアンケートに基づいて、需要、供給両分野での諸課題に関する共通点と差異点を国際化、共同化、環境問題などについて分析を加えた。その結果を荷主、物流業者、行政それぞれが計画し、実施すべき事項にまとめた。また共通の要件として、企業連携の推進、情報化の徹底、商慣行見直しの視点から分析した。 荷主、物流業者、行政は地域市場中で多様な連携を通して物流資源の最適分配を図っているが、これをより効率化するためには企業間連携に関する取引条件を見なおすことが必要となる。そこで県内の食品流通の現場に視点を置いて実態を調査し、その分析を深めた。また、広がりつつある静脈物流についても分析を加えた。 物流市場における取引条件とは、物流基本6 機能を総合管理して達成する納品条件の遂行である。物流の納品サービスは主に時間、物量、情報、付帯、信頼と商品の品質維持などの要素から構成している。取引条件を見なおすために、物流納品条件のレべル設定、物流コスト把握、物流取引を巡る商慣行の簡素化、物流企業からの提案力の強化などが必須となった。 以上の岐阜県内民間企業の物流問題に関するアンケート調査分析と岐阜県内加工食品業界における物流に関する取引条件の分析を踏まえて地方物流市場の効率化・高度化策の方向として、生産、販売活動の効率化、物流企業の活性化、地域物流市場における企業間ネットワークによる環境課題への対応、の三つに纏めた。 |
●王偉誠 WANG WEICHENG 「中国トラック輸送事業の活性化策」 2004年度修士学位論文
MEASURES TO
VITALIZE BUSINESS OF TRUCK TRANSPORTATION IN CHINA
中日の物流格差は大きい。そこで現在中国で一番進んでいると考えられる「青島ハイアール物流株式会社」(以下「ハイアール物流」という)と「南京王家湾物流中心」(以下「南京物流センター」という)を対象とし、その現状、課題、方策を研究する。この調査・分析を通じて、中国物流の現代像を掘り出し、これを現在の中国でも実現可能なーつのビジネスモデルとし、他の荷主や今後の物流事業の活性化に生かすのが本研究の主な目的である。調査方法として、現地ヒアリング調査、e メール調査で実施した。現在中国で物流効率化が比較的鮮明に求められている家電業界市場を対象とし、その中でも最も先進的な物流システムを導入していると考えられる「ハイアール物流」、「南京物流センター」での物流活動を調査、研究を行った。また、物流基盤としているインフラストラクチャー整備(道路を中心に)や管理体制について、現地ヒアリング調査と文献調査を中心に実施した。この現状、課題、方策に関する調査・研究のための一方向として、日本でも先進的な三洋電機ロジスティクス株式会社や東芝物流株式会社の物流システムと比較、対照にした。これら代表的な2 国でのシステムを比較して、中国物流システムのあり方を検討したものである。中国トラック輸送の発展は立ち遅れている。調査により、経済発展とともに営業トラック輸送が増加しているが、物流高度化に寄与するサービスの向上がみられないまま、競争が激化している。その結果、流通を支える商品物流が大きなネックを抱えていることがわかってきた。日本の先進的な物流事業者と比べ、少なからず改善の余地がある。 |
● 菊地豊 「中小トラック運送事業者の活性化に関する調査・研究」 2001年度修士学位論文
(STUDY
ON ACTIVATION OF THE MIDIUM AND SMALL TRUCK TRANSPORTATION
COMPANY)
調査・研究の背景 産業界においては、実需に対応した在庫管理のシステム構築が大きな課題となっている。 この課題解決の担い手である中小トラック運送事業者は「多頻度少量納品」や「JIT納品」等の質の高い物流サービスを提供している。 その反面、輸送活動がもたらす深刻な環境破壊への認識・対応が問題となっている。 さらに、同運送事業者は既存の荷主に対する依存率が高く、消耗戦とも言うべき価格競争で自社の優位性をアピールしているのが現状である。背景としては、同運送事業者が同業者と近似した物流サービスを提供しており、荷主の視点に立てば、どの業者でもサービスレベルは近似しており、魅力ある物流サービスとの見方をしていないことや、従来から荷主の立場が強いことが考えられる。 調査・研究の基本目標 魅力ある物流サービスを提供できない要因の一つとして、経営資源が充実していないことが考えられる。特に経営戦略を実現するための人材の雇用・育成をどのように行っていくかが課題である。 これら山積している課題に対応する活性化策として、経営資源のあり方、短・長期対策の構成等を考慮し調査・研究することにする。 調査・研究の方法及び分析結果 @ 文献調査 A Y社アンケート調査(現場調査) B Y社ヒアリング調査(経営戦略調査) 上記の@〜Bの調査により下記に示す短期及び長期の活性化策が抽出される。 ・短期活性化策例 物流サービスの品質は「人の力」と「マシンの力」の組み合わせで左右される。つまりオートマチックよりもハーフマチックを重視することが大切になる。 Y社においては正社員、パート・アルバイト問わず均一の作業品質を保てるよう、現場改善のための専門チームを経営トップ層、管理職層、現場作業員層から募集・選任し、同チームにより現場の作業マニュアルを作成しP・D・C・Aサイクルにより随時改善して行く。 ・長期活性化策例 同運送事業者の今後の取組みとして、荷主から受動的に物流業務を請け負うのではなく、荷主の経営戦略に参加するような積極的な物流改善案を提示し、実行していく。魅力ある物流サービスを提供することで荷主とイコールパートナーの関係になることができる。そのためには、絶えず市場の動向に注視しておくことが重要である。 Y社においては、魅力ある物流サービスを荷主に提供するため3PL、物流コンサルティングの 事業化推進、ISO14001の認証取得などの取組みを行っていく。 今後の課題 ・ 各地域で活性化の事例調査を重ねていく。 ・中小トラック運送事業の高度化に資するため、理論と実践についての検討を全日本トラック協会や日本物流学会、そして職場で行っていく。 |
● 奥田弓子 「都市内物流の効率化に関する研究」 2000年度修士学位論文
(A
STUDY ON EFFECTIVE LOGISTICS FOR URBAN AREA)
今日わが国においては社会経済のグローバリーゼーションの進展、物流ニーズの高度化・多様化、道路交通混雑、環境問題の深刻化など、物流を取り巻く環境が大きく変わっている。また、人々のライフサイクルの変化により、物の流通経路も変化してきている。それに伴い、効率的かつ高品質な物流サービスが求められている。また、物流を効率化させる意味で、"共同化・システム化"もキーワードになっており、物流の情報化、ネットワーク化などへの取組みが活発化し、物流を支える道路や貨物ターミナル、空港、港湾など公共投資によるインフラ整備も全国的に進められている。各地域における物流の効率化を効果的に推進するためには、国の全国的な視点からの施策と連携して、地方公共団体が中心となって、交通環境改善や物流コスト削減による豊かな生活、まちづくりに向けたハード・ソフト両面にわたる総合的、かつ計画的な取組みが不可欠である。 第4章では福岡天神地区、日本橋繊維卸業界などの事例を調査し、共同化によって輸送費は減少するが、ノード費用の増大によりシステムの全体費としては増大傾向にあるということが分かった。共同化システムでは道路交通混雑緩和を行うことは難しく、国や地方自治体の協力が必要である。また、国や地方自治体の協力のためにはロジスティクスを広く一般消費者や国民に知ってもらうことも重要であり、そのために宣伝広告なども必要である。 第5章では事例を参考にし、ユニット型共同荷捌きシステムというすべての地域や様々な業種、物流に対応できるシステムを目指して考えた。メリットとしては物流コスト削減、納品の効率化、人員削減、地域活性化などが考えられる。 ユニット型共同荷捌きシステムはその地区でのシステムの理解、全体のシステム参加が必要である。現在ドア・ツー・ドアの輸送を行っている企業も、ユニット型共同荷捌きシステム構築後は、荷捌きスペースに入出荷をしなければならないなどの問題点、異業種間で相互協力をおこなわなければならないなどの問題点がある。その解決のためには、物流コストの抑制がどの程度実現出来るかがシステムの理解、運営参加協力の鍵になってくる。多くの共同化システムでは国や地方自治体の協力を得ているが一部の共同化システムでは物流企業などに偏った利益を生じている場合があり、その一方共同化システムにより低コストで効率的な物流を行い、一般消費者や国民に利益をもたらしている共同化システムもある。こういった不公正をなくすためにも共同化システムは新しい創造性と観点から次の時代をになう共同化システムの構築を目指している。 |
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平野美宏 「物流分野における顧客満足向上に関する研究」 2000年度修士学位論文
(A STUDY ON CUSTOMER SATISFACTION IMPROVEMENT IN LOGISTICS FIELD)
近年、顧客やユーザーからの納品を中心とした物流サービス要求が高まっている。このような状況のなか顧客の期待や要望に応えられる変化対応力こそ企業存続の基本であり、源泉といえよう。したがって、顧客満足を提供するためには、取引先の要求や、自社のサービスの満足・不満の原因を正確に把握した上で、企業組織をあげて顧客満足の向上に取り組むことが必要である。顧客満足向上への追求は、すべての企業経営活動の重点課題であり、これからの時代は、顧客の信頼性、満足性を向上させることが重要なのである。 (1)顧客満足とはサービスによって十分な満足をあたえることによってうまれる。この極めて広く、多様な意味で使われているサービスとはどのようなものなのかを考察すると、その体系の中で物流分野のサービスは重要な役割を果たしており、物流サービスが顧客満足に多様な影響を及ぼしていることが明らかになった。 (2)顧客満足の調査分析をする上で、ある企業に特に納品サービスにしぼったアンケート調査を行い分析を試みた。本調査の真の狙いは、単に顧客満足の水準を知ることではなく、その要因は何なのかを知ることに重点をおいた。顧客からの卒直な評価を得ることは、顧客の満足・不満を知る上で非常に有意なことであり、今後取り組まなければならない課題を明確にした。すでに行われているサービスの質を高めると同時に、情報化、人材の育成といった根本的な課題に取り組まなければならない。 その結果、次のような結論を得た。 物流サービスに占める納品サービスの重要度が高いとの考えに至り、この納品サービスの質を高めることが顧客満足の向上に多大な影響を及ぼすことが改めて検証された。物流サービスは顧客満足向上の上で重要な要素となり、物流サービスの差別化が有利性を確保する重要な手段となる。顧客満足を向上させるためには「顧客の視点」からサービスを考え、またそれを的確に把握するための手段を有効に活用しなければならない。今後この手段としてもっとも期待されるのは情報機能である。情報機能をフルに活用し、納品時間、納品スピード等を短略化しサービスの質を高めることが顧客満足への一番の近道である。中小企業間においては情報化への取組みの段階格差が大きいため、情報化対象分野を明確にし、経営者が情報化を十分理解すること、社員への啓発を図っていくことも情報化を推進する上で重要である。これからの顧客満足の向上には物流情報化への取組み、それをうまく活用できる人材を育てることが急務である。物流は効率性と合わせて物流サービスという効用性に着目しなければならない。 |
●土井義夫 「物流分野における企業連携の進展動向とその評価に関する調査・研究」
1999年度修士学位論文
(STUDIES ON DEVELOPMENT AND EVALUATION FOR CORPORATIVE RELATIONSHIP IN LOGISTICS FIELD)
共同輸送等の企業連携は、物流分野にとどまらず企業全体の戦略として注目されている。この連携には、垂直、サプライチェーン、水平、ネットワーク等がある。特に産業界での閉塞感を打破する手立てとしてサプライチェーン(供給連鎖)に期待が集まっている。これらを推進するための日本的な取組方、諸連携を実践するための課題分析に視点を置いた調査分析を行った。 分析の焦点は、諸企業連携についての態様・特徴を体系化し、その効果尺度を設定・評価することに置いた。さらにその推進主体の分析も加えた。このため参考文献調査並びに事例についての聴取を行った。 以上を通じてつぎのようなことがわかった。 (1)物流分野での基本諸課題には、JIT納品等のサービス高度化を低コストで実現、トータル在庫の削減、生産から消費に至るサイクルタイムの圧縮、さらには廃棄物の回収等を包含した循環型社会システム構築支援等がある。 (2)この課題解決に必要なわが国の企業連携に不可欠な事項は、物流活動のトレイドオフ特性に注目した連携の効果を測定する評価尺度の設定と評価である。 (3)これらの設定と評価に際し必要なことは、実現されている諸事例や提言されている諸事項についての諸特性の分析と、日本的な流通構造、商習慣や経営等の特徴を踏まえることである。 その結果、次のような結論を得た。 日本的SCMの分析とそのパターン化を試みると、それらの事例間には「浮かび上がる共通した課題あるいは方向」がみられる。それには3つの分野および、9つの視点がある。 また、日本的なサプライチェーンを拡大していくうえでの9つの側面とは、@環境保全の効率的対応、A中小企業での実例の発掘、B実現性・迅速性の追求、C現場力の維持・向上、D共有する情報の選択、E評価力の確立、F子会社との関係深化、G組織間調整機能の拡充、H輸送機能の拡大である。 今後、物流分野での連携の効果を測定するためには、対立概念に注目する必要がある。例えば、費用対効果、企業性対社会性等である。これらの評価要素の大柱には、費用・サービス、関連在庫、サイクルタイム、環境保全等がある。またこの中柱は、物流交通量(トラック所要台数)、物流拠点数、排気ガス量等が考えられる。物流活動に不可欠な社内外にわたる「説得力」を発揮するために、これらの明確な計量化が必要となる。 |
●木谷隆伸 「循環型物流システムの構築に関する研究」 1997年度修士学位論文
(A STUDY ON CIRCULATION TYPE
LOGISTIC SYSTEM)
日本の消費者は大量生産・大量消費・大量廃棄時代の生活が定着しライフスタイルの変化を巻き起こした。景気の低迷が続く今日でも排出するごみの量の伸びは鈍化してきたが、減少するまでには至っていない。それに加え一般廃棄物の埋立地は確保が難しくなっている。一般廃棄物の中でもとりわけ容器包装廃棄物は分別すれば資源であるが混ぜればかさばる割に軽いごみとして処分されてきた。このような流れから日本のリサイクル法が誕生した。 日本のリサイクル法は責任分担の法律として誕生したが、消費者は分別排出を、事業者は自治体に比べると負担が軽い再資源化費用を、自治体は一番負担が重い回収・分別・保管を任された。これは、従来の法の目的とは逆で、自治体に新たなる負担を背負い込ませることとなってしまい、「東京ルール」で問題が頭在化した。 日本のリサイクル法の元となったと言われるドイツのリサイクル法では、容器包装物を全てメーカー側に一元化して回収させ再資源化を任せたことにより、再資源化のコストを押さえる努カがメーカー、販売店とも必死になって行われている。そして何よりも大量の包装廃棄物が回収されることにより、従来焼却や埋立を行っていた包装廃棄物がリサイクルされ、自治体の負担が軽減され、埋立地の寿命も長くなった。消費者は処理費用の安い商品すなわち簡易で再生しやすい容器包装の商品を購入している。 このような動きの中で本研究の対象である循環型物流システムの目的は、通信情報ネットワークを通じて、回収・処理・再生の三主体での容器包装廃棄物の情報の共有化、資源ごみ再利用の促進、廃棄物の減量化等に寄与することである。消費者に対しては分別排出のルール、リサイクルに関わる情報(リサイクルルート、リサイクルコスト等)を提供する事により、分別排出の促進・自治体容器包装廃棄物リサイクルに対する理解を深めることにも寄与する。 本研究の循環型物流システムは、環境保護に目を向けるだけでなく、ごみに対しての意識を変えることも考慮して構築したものである。それは消費者、事業者、自治体を結び、情報を交換することにより、消費者が本来持っていたはずのモノを大切にする心を養い、そしてリサイクル活動に目を向けるだけでなく、積極的な参加によってリサイクルを一人ひとりが推進することにもつながる。また、消費者に自治体のリサイクルに対する取り組みを理解してもらうために、リサイクルルートやコストを明示することで、今まで見えにくかった部分が明らかとなるので、消費者の分別回収に関する理解が進むものと考えられる。消費者から情報を受けた事業者や自治体も相互に刺激しあい、リサイクルを推進していく。このように情報の交流でお互いを刺激し、リサイクルに対する意識を変えることで、リサイクルコストの低滅が期待できる。それに加え、資源ごみの情報を回収・処理・再生の3主体で集積し、必要となる情報を必要なときに取り出して活用することで、静脈物流を円滑に推進することができる。 |
●岡田達明 「物流・情報分野における企業連携に関する研究」1996年度修士学位論文
(A STUDY ON CORPORATIVE
RELATIONSHIP IN THE LOGISTIC AND INFORMATION SYSTEM)
研究の目的は、物流分野における企業提携とその情報機能の活用態様と高度情報化社会における効果を分析し、また情報の活用(共有化)を実現していく中で当面する間題点、今後の課題とその方策を物と情報の一体化という視点で提起していくことである。 物と情報の一体化を実現するために、次の3点について提起する。 戦略同盟としては、主に流通チャネルの垂直統合と水平統合がある。垂直統合でメーカー→卸売業→小売業の流通経路を短くし、コストの低減と情報の流れをスムースにすることで消費者のニーズに添った商品を低価格で提供することを目的としている。水平統合ではメーカー、卸売業、小売業がそれぞれの分野を統合・集約することで規模の経済効果と情報の共有化を図り、コストダウンを実現することを目的としている。これらの連携 に不可欠な要素としては、各企業の物的・質的な経営資源であり、特に情報システム・情報資源である。これらの高度化が物と情報の一体化を実現するためにめのあらたな連携パターンを生成し、高度な情報システムを構築していくことになる。 ・企業間ネットワークへの取り組み 企業間ネットワークへの取り組みを推進するためには、VANシステムの利用拡大、情報共有化へのデータ交換の標準化への取り組みが不可欠となってくる。これを発展した形にQRやECRがある。また企業間ネットワークと同様に従来の企業内マネージメントの思考もネットワーク思想(点・直線から網・多線へ 例イントラネット)へ転換していかなければならない。ネットワーク思想への転換には、業種業態別に定着していた取引慣行を見直し、相互の無理無駄を排除することで取引の透明化を図り、企業間のパートナーシッブを強化する必要がある。 企業間ネットワークやネットワーク思想には、仮説を立て実績に対して検証をおこない、フィードバックして主体的に情報を活かすことが重要となる。この「仮説〜検証」のプロセス部分を迅速に分析することが可能となる情報システムを組み込むことが必要である。 ・戦略同盟を通じての企業改革 企業改革をおこなうには、コストダウンや消費者視点の発想に基づいた取り組みが企業内に展開されることが必要である。流通業では適正在庫の維持、ローコストオペレーションを推進し、物的・質的資源を効率的に運用することでコストダウンを図り、また菅理部門を中心とした見直しによる余剰人員は、PB商品の開発や顧客サービスヘシフトすることで、消費者二一ズに迅速に対応することが、一つの方向となる。 また企業改革には経営トップの決断力とリーダーシッブが最も大切なことである。これを支授する強力なスタッフとともに業務改革・意識改革をおこない、社員全員の志気を高め、無駄を排除していくことが必要となる。このことが対外関係の取引先との信頼関係を熟成し、樹立していくこととなる。 このような要件を溝たし、各企業内で現有する経営資源を活用することで、お互いの関係を「取引先」から「取り組み先」とし、パートナーシップを構築していくことが必要となる。このように物と情報の一体化(共有化)を効率的に利用していくことが、グローバル化の進展の中で企業連携を成功に結びつける。 |
●武内章 「公共物流拠点の形成に関する研究」 1996年度修士学位論文
(A STUDY ON CONSTRUCTING
LOGISTIC NODES GUIDED BY PUBLIC SECTORS)
1.岐阜県関市の物流拠点の候補地が、平成6年11月に建設省の道路一体型物流拠点整備モデル事業の第1号に埼王県羽生市とともに指定された。 これを契機として、「公共物流拠点の形成方策」を研究目的とした。 2.この研究に当たっての問題意識としては、国においても県においても物流行政が縦割行政となっているため、多元的システムとなっており、これらの施策の戦略的統合が急務となっていることにある。 3.研究の構成としては、まず、物流拠点形成にかかる基本的視点として、ロジスティクス思考、公的物流拠点、国際物流及びネットワーク産業とは、何かを明かにし、次に物流拠点構築をとりまく環境条件の課題分析として地球環境問題、交通問題及び労働問題を取り上げ、物流の外部要因を認識した。さらにフィールドワークとして関遵する事例研究10例での探査から、関広域物流拠点形成への教訓を引き出し、終わりに、この事例研究と頭脳集囲である各シンクタンクの提言から導いた物流拠点整傭の基本的視点を統合して関広域物流拠点形成の基本的方向を12原則のかたちで確立した。 この12原則は、次のとおりである。 ・生活大国づくり @消費者起点の顧客サービス提供 ・産業の高度化 情報化
B経営機能の高度化 ・地域経済社会 F地域経済における国際化対応 ・社会基盤 H交通アクセスの優位活用 |